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NEXシリーズでの天体撮影を考える #1/3 (準備編)

今年に入って何回かNEX-7を使って星景/星天撮影(以下天体撮影)をしてますが、NEXシリーズ(今はA5000/6000だけど)ならではの撮影の工夫、特性、現像の工夫みたいなものが割と纏まってきたので軽くかいてみようと思います。

準備、撮影、現像みたいな三本立て。

準備編

このエントリに興味があるということは恐らくNEXシリーズをお持ちか興味があるということだと思うんですが、NEXシリーズで星天/星景を撮影するに当たってはまずNEX自体の特徴から撮影準備を考えてみたいと思います。

天体撮影はセンサーの限界に挑む撮影法

天体撮影では一般的な街中の夜景撮影と違って、光の量が無茶苦茶少ない上での撮影を行いますので、普通に街中と同じ感度(ISO100とか)で撮影を行うととんでもない露光時間が必要になります。例えば私がよく使うセッティングはレンズがF4でISO1600の30秒露光ですがISO100で撮影を行うと4段分(24 = 16倍)露光時間が必要なので8分露光時間が必要にな ってしまうわけですね。そこで増感を利用して露光時間を短縮していくわけですが、少し前ならISO400/800が常用、そして現在ならISO1600/3200、更に良いセンサーを積んでいれば更に上が常用されていると思います。

通常の一眼レフカメラでは当然ながら日中は1/1000秒とかのシャッタースピードで利用しますし、夜間でも夜景で多くても10秒等の利用方法が普通です。センサーの設計もそれに最適化する形で設計されていますので、1分を超えるような長時間露光に設計のメインフォーカスは当たっていないのが普通です。

NEXシリーズでは、APS-Cと比較的大き目サイズのCMOSセンサーが採用されていて、NEX-7ではこのサイズに24Mpx、NEX-5/6では16Mpxの画素が詰め込まれています。一昔前のカメラだとISO1600ともなれば画像がつぶれてノイズだらけで何を撮影しているのか解らないぐらいでしたが、NEXシリーズであればISO1600は全然許容範囲です。高感度耐性はかなり優秀で、NEX-7ならISO1600、NEX-5/6ならISO3200あたりまでは常用で使っていけると思います。NEX-7なら更に上のISO16000、NEX-5/6ならISO25600まで利用できますが、これはあくまで緊急用。かなりノイジーで偽色が出てしまうのでこのあたりは、写真の構図を決める、テスト撮影をする等に利用すると良いかなと。

通常のシチュエーションだとまずISO12800なんてケースは使わないと思いますが、天体写真ではこうした限界値もガンガン使って行きますよ。もちろんバッテリー消費はかなり激しくなりますので予備バッテリーはお忘れなく。

NEXにはタイマーレリーズがない

残念ながらNEXシリーズには長時間露光撮影にとても便利なタイマーレリーズというものがありません。NEX-3Nだけは唯一リモートコードが使えるらしく、裏ワザがあるようなのですが基本的には長時間露光をするなら、最大30秒まで設定できる本体のシャッタースピード設定を使うか、BULB固定にしてシャッターボタンを手で押し続けるか、もしくは赤外線リモコンを手で操作するということになります。NEX-C3等の古い機種だと赤外線リモコンが使えないので、30秒で我慢するか物理的にシャッターボタンを固定する何かを考えるしかなさそうです。

中華リモコンだと格安でてにはいります。まあクオリティも中華ですが。

一方、天体撮影ならではの悩みとして「星が動く」という問題が別途あります。実際には星は動いていないのですが、地球が自転しているため、動いているように見えるということです。目で見ていればほとんど解らないレベルかもしれませんが、写真撮影する場合は結構影響があります。これはレンズの実焦点距離(35mm換算ではなく実距離です)によって計算できるのですが、広角であればあるほど影響が少なく、望遠であればあるほど影響を受けます。星を「点」として撮影したい場合はキットレンズである18-55のワイド幅、18mm程度の広角レンズなら実質10秒程度が限度です。200mmの望遠レンズであれば1秒程度が限界です。とはいえ、写真として全体を見る場合はある程度の流れは許容できると思いますので実際はこれより長めでOK。

ちなみに、時間制限を無視して、どうしても星を点像にしたい!という場合は赤道儀という地球の自転にあわせてカメラを回転させる道具があります。今ではポータブル赤道儀が割と手の届く額で入手できる(それでも最低2,3万円クラス)ので興味のある人はそちらも。私はVixenのPORALIEを利用してます。

というわけで、星を止めたい場合は、本体のシャッタースピード(SS)コントロールと超高感度設定(ISO3200超)で頑張るか、赤道儀を導入する。星が流れても良い、もしくは意図的に流したい場合は30秒以内なら本体のシャッタースピード(SS)コントロール、それより長時間なら赤外線リモコン or レリーズを頑張って抑えるという感じです。まずはISO1600で30秒も露光すればそれなりに写るので最初は本体だけでやってみるといいかもしれません。街中だとISO1600で10秒もすれば真っ白ですしね。

ちなみに、もしカメラを始めたてでしたら、事前にレンズの絞りと、ISO感度シャッタースピードの関係だけは絶対にマスターしておいてください。天体写真などの長時間撮影時には計算が必須になりますよ!

素数によるアドバンテージはある?

同じAPS-CであってもNEX-7は24Mpx、5/6は16Mpxです。24Mpxのセンサーの方が画像ピッチが細かく、配線が多く、ノイズが出やすくなります。通常の夜景撮影であれば16Mpxの方が画素ピッチに余裕があるため、ノイズが少なく全体的に絵がまとめるので少ない方を好むという場合が多いと思うんですが、天体写真の場合はこの画素数の多さがディティールの形成に有利に働くことも。というのは、とても小さな天体の撮影を行ったり、広角レンズで撮影した写真を等倍で切り出して再処理を行ったりする場合等、画素数が多い方が精度を上げやすいためです。

特にNEXでは望遠レンズが今のところSEL55210での換算315mm相当の望遠レンズしかない(マウントアダプターをかませば別だし今ならレフレックスレンズもあります)ため、天体望遠鏡なしで星雲などを狙いたい場合は望遠レンズで撮影した画像を更にクロップする、なんて使い方をするため画素数が多いと結果的にトリミングした時に絵が大きく、更にディテールを高めることができるんですね。

ただ、どちらが画素数絶対優勢というわけではないので、このあたりは使用用途で。クロップなどを狙わないのであればむしろ16Mpxの方が有利な場面は多いと思います。

他の必需品

センサーの話でも出ましたが、予備バッテリー。こいつはできれば準備しといた方がいいです。とはいえ、必須というわけではなく、予備があると安心ぐらいのニュアンスで。私の例だとNEX-7でだいたい3時間ぐらい粘るとバッテリーを一本消費しきるかというところです。昼間にも撮影を行ってから夜間の撮影に挑むケースが多いためだいたい予備バッテリーに途中で入れ替えることが多いです。

三脚は絶対に必須です。でも、流石のミラーレスだけあって、安いもので最初は十分です。ただあまり背を高くしないことをお勧めします。安い三脚は風に非常に弱いので。ただ、赤道儀を導入するとか、重たい望遠レンズを付けるとかする場合はちゃんとした三脚の導入を検討した方が絶対に良いです。また、NEX-5R/6/7あたりならば本体に水準器がついてますが外部の水準器があるとよりベターです。

あとはNEXに限りませんが、赤セロファンなどを貼った懐中電灯などを用意しておくと良いです。赤色は夜目に優しいので。間違ってもLEDライトなんか使わないように。それと、NEXの液晶画面が夜だと相当明るいので、撮影を始める前に液晶画面の輝度を最低に下げておき、メニューの配色をブラック基調に変えておくと良しです。私はやってないですが、セロファンを貼るのも良いかも。本当は減光フィルムなどがあればもっと良いんですけどね。

最後に、できればソフトフィルターも用意しておくといいです。鉄板なのはKenkoのProSofton A/Bですが、広角域ではレンズへの入射角の関係で光が歪みますので注意。超広角レンズの場合はフィルターを切ってセンサーとレンズの間に挟むといいかも、と思ってますが私はまだ試してません。(そのうちやろうかなと思ってます)

そんなわけで撮影編へ続きます。